※これは、「三国志 天下三分の計 にょた!」の設定に基づいた、キャラクター小説です※


綺麗なまんまるお月様、が煌々と輝く夜。
殿や他の武将達勢揃いで取った夕餉の後は、みんなが大好きな殿との会話を楽しんで。当然の様にお酒も振る舞われ旨い肴も出されみんながみんな良い感じにほろ酔い気分。
城の中に設えられた大きな浴場で日中の汗も流し。

そんな本当に良い気分な夜のお話。



『パジャマ☆パーティー』


「相変わらず趙雲は質素な寝巻きを着てるのねぇ」
趙雲の、何の飾り気も無い薄桃色の寝巻きを見て関羽がそう肩を竦めた。言われた当の趙雲は「だあって」と拗ねた顔を見せている。そんな二人を眺めて諸葛亮はにこにこ笑っていた。
語り明かす勢いで遊びにきましたーっと、関羽が好きな銘柄の酒瓶と、夜だというのにも関わらず自分達用の点心とを手土産にやってきた趙雲と諸葛亮を関羽も笑顔で迎え入れてくれて。関羽の大きな寝台に三人は各々好きな様に座って会話に花を咲かせていた。
先程の関羽の一言はその中の一つだ。
趙雲は愛らしい外見の割りに質素な物を好み、戦装束も実に軽装。それは付き合いの長い関羽も諸葛亮もよく知っている事ではあるが、彼女の年齢からすればもう少し飾り気があってもいいんじゃないかというのが関羽の言い分であるらしい。
「派手な寝巻きって寝難そうじゃないですかー」
「諸葛亮はどうなる」
「え、私?」
「あ、そう言えば諸葛ちゃんは可愛いの着てるよね」
突然話を振られた諸葛亮は、関羽が顎をしゃくったのにつられて自分の寝巻きを見遣ってしまった。諸葛亮が愛用している寝巻きはフリルやレースにポイントとして赤いリボンが付いたノースリーブ型のワンピースの様な形で少女らしい愛らしいものだ。吹っかけた当の関羽は、人には着飾れと言うものの寝巻きは至ってシンプルで、下着のみというもの。まあとは言え、彼女も普段の格好は鎧装束と言えど殿に寄り添う花としては何の遜色も無い飾り気は見せているのだが。
「私は…可愛いのが好きだから」
「寝難くないのー?こういったひらひらとかさー…うーん、可愛いなあとは思うんだけどなあ」
「じゃあ趙雲殿も着てみれば良いのに」
「え。無理だよあたし似合わないよー」
「着てみなければ分からないでしょう?ほら、諸葛亮。アナタの寝巻き、趙雲に着せてみなさい」
「えっ!」
「え、あの、その間の私の寝巻きは?」
「趙雲のを着ていれば良い。ほらほらほらさっさとする」
「あ゛ー!!やだやだやだ無理だって絶対似合わないもんあたし可愛いの似合わないって関羽姉様やーめーてー!!」
逃げようとする趙雲を咄嗟に捕まえ寝巻きを剥ぎ取ろうと奮戦している関羽のなんと楽しそうな事か。普段こんな騒ぎには蜀の義兄妹の末妹張飛が諸手を上げて参加し関羽は傍観しているのが常なのだが今夜に限っては酔いもある所為かいつもより随分関羽は賑やかだ。まあ張飛が居ない所為もあるのかもしれない。諸葛亮はそんな事を漠然と考えながらその様子を眺めていたのだが、遂に関羽に寝巻きを剥ぎ取られ下着一枚というなんともはしたない格好で半泣きに寝台に突っ伏している趙雲と戦利品を片手に物凄く満足げな笑顔で振り返った関羽にはっと我に返った。
「ううぅ…姉様ひどいーっ」
「おだまり趙雲。さあ、諸葛亮も脱いで。脱いだらこれ着てなさい」
「あ、はあ…」
両手で胸を隠しながら恨めしそうに関羽を睨む趙雲には申し訳ないが、流石に自分も今の様な笑顔の関羽には逆らえない。それに可愛い格好をしている趙雲というのも見てみたい諸葛亮は自分の寝巻きを脱いで関羽に渡すと直ぐに受け取った趙雲の寝巻きを着込んだ。流石に裸の胸を晒したままというのは耐えられないから。
ひらひらレースの寝巻きを受け取った関羽はそれを、今だ睨んでいた趙雲にばさりと被せると「ほら腕出しなさい。…どうしてそこから頭と腕を出すの!」等と趙雲と共に悪戦苦闘。普段の趙雲の格好を考えれば、むしろあちらの方が着方困難の様な気がするが面白いものだ。
しばらく趙雲の寝巻きの長い袖をふりふり振りながら目の前の騒ぎが収まるのを待っていたら、なんとか騒ぎ暴れる趙雲に着せ終えた関羽がいつもの体力は何処へやら肩で息を吐きながら「やっと終った…」と満足げな声を上げた。そんな関羽の前にはつい先程まで諸葛亮が着ていた筈の可愛らしい少女趣味の寝巻きを纏った趙雲の姿があった。
「う〜…やっぱり変じゃないですかぁ…?」
上目遣いに、何処か恥ずかしそうに趙雲はそう言うが。
落ち着いた関羽と傍観しっ放しだった諸葛亮とでそんな趙雲を見遣る。
その姿、変な処か、白のフリルやレースに、真っ赤な細身のリボンが施された可愛らしい寝巻きを着た趙雲はそれはそれは愛らしい姿だった。桃色の長い髪も普段は二つに結い上げているが今は夜という事もあり下ろされていて、そのさらさらストレートは実に寝巻きに似合っている。諸葛亮よりも年上の筈なのだが元々幼い顔立ちの所為もあってか、少女趣味のその寝巻きも諸葛亮が着たのとは間違った印象を与えていた。
本当に、可愛らしい。
此処まで普段の活発な彼女の印象が変わり愛らしさが増すのならば、やはり義理とは言え姉心として関羽は趙雲にもうちょっと可愛い服を着て欲しいものだと思い直してしまう。諸葛亮としても蜀軍の中でも一番の仲良し相手なのだから自分と似た様な服を彼女が着る様になればペアルックに近い格好も出来て楽しいのにとぼんやりと思ってしまっていた。
「変じゃないわ。やっぱりアナタそういう格好を普段からするべきよ」
「ええっ」
「可愛いですよ〜趙雲殿。今度私の服着てみませんか?きっとお似合いになると思うんです!」
「えええっ」
「あらいいわね。二人揃って落ち着いた可愛らしい服装なんてして兄者に見せて御覧なさい。きっと気に入ってもらえるわよ?」
「え、殿…うぁ…」
殿大好きと公言して止まない趙雲としては最後の関羽の言葉は結構効いたらしい。殿が気に入ってくれるのならば、可愛いとは思うものの本当はこんなふりふりひらひらが苦手なのもいっそ我慢してしまおうかなんて考えてしまう。だがしかし…!などと百面相状態で考え込んでしまっている趙雲の内心が手に取るように分かってしまった関羽と諸葛亮は顔を見合わせると一つ頷く。
これはもう一押ししてしまえばきっと趙雲は落ちる!
何か違う事に熱中してしまい始めた二人だった。
「諸葛亮。アナタの服、適当に見繕って持って来なさい。趙雲に着せてどんなのが似合うのか選んでしまいましょう」
「それは良策ですね。行って参ります!」
「って、ああああ諸葛ちゃん待ってー!どうして普段は鈍いのにこんな時素早いのー!!」
「さあ逃がさないわよ趙雲。そんな格好で城内で諸葛亮と追いかけっこが出来るのなら止めないけれど」
「う…っ」
ふふんと笑みを浮かべる関羽にそう言われてしまうと、趙雲は身動きが取れなくなってしまう。陽の下ではどんなに露出が高い格好をしていても結構平気だというのに夜になると露出が高い格好を避けたがる趙雲の心を見抜いている関羽は彼女がこの部屋から出れないと分かっていて言ったのだからタチが悪い。泣く泣く部屋に留まった趙雲にまたも満足そうな笑みを浮かべて諸葛亮が戻って来るのを、酒を満たした杯を傾けながら関羽は心待ちにしているのだった。

諸葛亮が戻り、またも関羽の部屋からは趙雲の叫び声が響いて。
その賑やかな声につられて殿や張飛がやって来るのはもう少し後。


END

Written by 古本 縁

















































































































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